私にはなじみの間違い電話がある。 最初にかかってきたのはもう何年前だろう。 不動産投資の勧誘電話が増えてから見知らぬ番号の電話は取らずに最初に番号をネットで検索するようになったが、当時はまだ、どんな電話も脇がばがばでばんばん取っていた。 「佐藤さんですか、朝霧装飾の山下ですが」「あ、違います」「お、失礼いたしました」 単純に、なにも疑うことなくただ、電話番号を間違えたのだなと、このころはまだ間違い電話が今より日常的だったこともあり、それほど気にはしなかった。 「佐藤さんですか、朝霧装飾の山下ですが」「あ、違います」「お、失礼いたしました」 ほどなくして山下を名乗る声から2回めの間違い電話が入ったとき、これは怪しいぞと思った。 2回、同一の相手から間違い電話があったのははじめてだ。 もしや間違い電話などではなく、朝霧装飾はなにか詐欺的なグループで、私の電話番号をどうにかしようとしているのでは