「長さん。もうこれで映画はおしまいだね。もうこれ以上の映画はできない。こんな立派な映画、もう2度とできない」 そういったのは、元宝島編集長で文筆家の植草甚一氏。文中の「長さん」とは映画評論家の淀川長治氏(ともに故人)だ。これは1965年の『8 1/2』(はっか にぶんのいち)の日本初公開時に交わされた会話である。 『8 1/2』 監督・原作・脚本:フェデリコ・フェリーニ/出演:マルチェロ・マストロヤンニほか/制作国:イタリア (C)MEDIASET S.p.A.(画像クリックで拡大) 「これで映画もおしまいだね」と言われてから、もう40年以上が経った。その間、膨大な数の映画が作られてきたが、映画歴代ベスト10のようなランキングには、必ずといっていいほどこの映画はランクインされている。最近でも、北野武がこの作品に影響を受けたことを公言するなど、世界の映画作家たちに与えた影響は計り知れない。