2 No. 606/January 2011 がらも一層のコスト削減に踏み込んだ。このときの非 正規労働者を対象とした雇用調整は「非正規切り」「派 遣切り」と呼ばれ世間の耳目を集めた。しかし,たび 重なる経済収縮のインパクトを経てもなお,日本の経 営者は正社員の長期安定雇用に対して高いメリットを 見出している(労働政策研究・研修機構,2010)。 本特集号の第一の目的は,日本企業の正社員の雇用 システムの「日本的」なる特徴を再確認し,そのうえ で平成雇用不況期において日本的雇用システムの何が 変わり,何が変わっていないのかを検討することであ る。目的の二つ目は,雇用システムが持つ補完性の考 察である。日本的雇用システムを構成する人事施策の 束はいかなる補完関係にあったのか。具体的には,ミ ドル・アップ・ダウンの調整様式,それを支える職場 の多くの従業員の幅広い専門性(知的熟練),それと