■飛ぶ孔雀 / 山尾悠子 庭園で火を運ぶ娘たちに孔雀は襲いかかり、大蛇うごめく地下世界を男は遍歴する。伝説の幻想作家、待望の連作長編小説。 最近「自分の好きな小説ジャンルはSFでも文学でもなく幻想小説なのではないか」と思ったのである。それはニール・ゲイマンやエリック・マコーマック、ジェフリー・フォードらの幻想小説諸作を読んで感じた事だったのだが、これら作家の作品を読んでいるとある日本人作家の名前が言及されることに気付いた。それが山尾悠子である。なにやら日本幻想文学界におけるボスキャラ級の方なのらしく、これは読んでみなくてはと思って手にしたのがこの『飛ぶ孔雀』である。 この本では「飛ぶ孔雀」と「不燃性について」という二つの中編が収められているのだが、この二つは世界観が微妙に被ったものになっている。「飛ぶ孔雀」はどことも知れぬ日本の古都を舞台に超現実的な日常が進行する。「不燃性について」はやは