蓮實重彦『映画崩壊前夜』 蓮實重彦の新刊『映画崩壊前夜』を読む。思ったり連想したりしたことを、以下に書いてゆこうと思います。 北野武の第1作『その男、凶暴につき』(89)に初めて接したとき、素晴らしいシーンの連続に、これは凄いとか傑作だとか思いつつ興奮しながら観つづけていたのでしたが(後年、観直したら結構スキだらけなので逆にびっくりした)、その反面、コレはちょっと‥という弱いと感じられるシーンも幾つかあって、その最たるものが白竜演じる清弘がチンピラをビルの屋上から落とす場面でした。 その直前までの、ガランとした室内に鉄パイプが転がり響きわたる音から、屋上のコンクリを振るわれる鉄パイプがガラガラ擦る音へ連鎖し、そうやって鉄パイプをふるいながら後ずさりするチンピラの背後に遥か下の地上の街並みがヌッとフレームインしてくるまでの呼吸が素晴らしいだけに、そこからの拙い指切り描写→落下するチンピラを数