日本語から見た日本人 —日本人は「集団主義的」か— 廣瀬幸生・長谷川葉子 1.はじめに 日本人は集団主義的である、というのが日本文化論において日本人を特徴づける 最も顕著な見方である。この見地から、日本人は自我意識に欠けるとか、日本社会は 対立を避け和を尊ぶといった考え方も生じる。この集団主義の見方は、文化人類学・ 社会学・社会心理学を始めとして多くの分野における日本研究に現われる(南 1994、 杉本・ロス 1995 などを参照)。日本語の言語文化研究もその例外ではなく、日本語は 集団主義と不可分の関係にある「ウチ・ソト」の概念によって特徴づけられるとする研 究もある(Bachnik and Quinn 1994、牧野 1996 など)。 このような日本文化論は、よく知られているように、日本人・日本社会は特殊であり 異質だという神話を生み出し、多くの日本人もまた、それを盲目的に信じ込んで