ホームレス、朽ちかけた動物の死体、老婆や身体障害者のヌード、そして、生まれる事がなかった水子たち……。直視することもはばかられるような物たちを、被写体として収めた写真集『羯諦(ぎゃあてい)』(ポット出版)が出版された。 数件の業者から印刷を拒否されたというこの写真集。そこに描かれているのは、25年にも及ぶ製作期間の中で生まれた、仏教に根ざした深い死生観による作品たちだ。果たして、どのような思いを持ちながらこの作品は製作されたのだろうか? 写真家・山中学さんに話を聞いた。 ──山中さんの写真は仏教観に影響されているということですが、幼い頃から仏教に深く関わっていたんでしょうか。 「どこのお寺に属していたっていうことはないですね。キリストもアラーもいなかった。ただ、たまたま家の周りにお寺があって、そこで行事があったり、葬式も家で執り行なっていたのを見ていたし、死っていうのが身近にあったんです」