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  • 【ぷらちな】『たまこまーけっと』柔らかに描き出される時間と人々/藤津亮太のアニメ時評‐帰ってきたアニメの門 第15回

    Tweet [第15回]『たまこまーけっと』柔らかに描き出される時間と人々 『たまこまーけっと』を見始めた多くの人は、同じメインスタッフが手がけた『けいおん!』をどこかに念頭において見始めたのではないか。作り手もそれを意識していたのか、第1話のトップシーン、主人公のたまことその友達が3人で手をつないで駆けている様は、ちょうど『映画けいおん!』のラストで駆けだした唯たちとまるで地続きのような印象を与えた。 だが『たまこまーけっと』は、そんな『けいおん!』から続く印象を、すぐさまするりとぬぐい去る。その最たるものは、コメディリリーフにしてストーリーの鍵を握る(と思われる)、トリのデラ・モチマッヅィの登場なのだが、この特異な存在についてはまた後ほど触れることにしよう。 では『けいおん!』から『たまこまーけっと』で何が変わったのか。 当たり前だが、画面に映るものが変わった。具体的には、作品が捉えよ

  • 【ぷらちな】『ドキドキ!プリキュア』アニメを彩る「色」の個性/藤津亮太のアニメ時評‐帰ってきたアニメの門 第14回

    [第14回]『ドキドキ!プリキュア』キャラクターを彩る「色」の個性 アニメにとって色とは何か。煎じ詰めるとそれは「光」と「キャラクター」ということができる。 我々が見ている色というのは多くの場合、「そのもの自身の色」と「そこに当たる光の色」で決まる。だからアニメの場合は逆に、そのキャラクターに塗る色を変えることで、光の状態を表現する。たとえば『風の谷のナウシカ』の序盤でナウシカが胞子を採集する場面。胞子の光によって照らされた部分を、明るい色に塗っている。さらに胞子の移動とともなってこの明るい色の範囲が変化することで、光源の移動も表現している。映像を見ると、まるで当にそこに光があるように感じられるシーンだ。 光が「色使いの変化」によって表現されるならば、キャラクターは「色使いの一貫性」によって表される。 2011年の「日経エンタテインメント!」に「戦隊モノ、アイドル…、グループにおける色と

  • 【ぷらちな】『おおかみこどもの雨と雪』「おおかみこども」と「母」と「花」/藤津亮太のアニメ時評‐帰ってきたアニメの門 第8回

    [第8回]『おおかみこどもの雨と雪』「おおかみこども」と「母」と「花」 子供のころ、両親のなれそめに興味を持って尋ねたことのある人は多いだろう。そこで語られる「やがて2人が結婚することを前提とした思い出語り」は、子供にとって、お姫様と王子様が出会い、「めでたしめでたし」で締めくくられるおとぎ話に限りなく近い。 「おとぎ話みたいだって、笑われるかもしれません。/そんな不思議なことあるわけないって。/でもこれは確かに私の母の物語です」 このようなナレーションで開幕する『おおかみこどもの雨と雪』は、確かにおとぎ話のような映画だった。 天涯孤独な女子学生・花が、偶然<彼>と知り合い、おおかみおとこであるという<彼>の秘密を知ってなお受け入れ、結ばれる。 親への言及が少なく、バックグラウンドをあえて詳細には描かれていない花と<彼>は、まるでおとぎ話の登場人物のようだし、さら成長した二人の娘・雪による

  • 【ぷらちな】『虹色ほたる~永遠の夏休み~』アニメーションの輝きが照らす問題/藤津亮太のアニメ時評‐帰ってきたアニメの門 第6回

    『虹色ほたる』を見た。 とてもみずみずしい映画だった。 物語はいたってシンプルだ。 小学6年生のユウタは1年前に亡くした父の思い出をたどるように、ダムのある山奥へと向かう。不意の豪雨に流されて崖下へ落ちたかと思ったユウタは、夕暮れの草むらの上に寝そべっていた。そこは1977年の夏。ユウタは、ダムに沈んだはずの村のはずれにいたのだ。 ユウタは、不思議な老人に、現在に戻るまでの1ヶ月間を、この村で過ごさなくてはならない、と告げられる。ユウタは、ユウタをいとこと呼ぶさえ子や、同い年の少年ケンゾーたちと、かけがえない時間を過ごすことになる。 郷愁をもって描かれる「夏の田舎の風景」「小学生の夏休み」。言葉にすればずいぶんとありきたりの内容になってしまう。確かにエピソードだけひろえば、作はさほど特徴的な内容とはいえない。作の魅力は、その児童文学的なクリシェを、作画と美術の力でみずみずしい映像体験へ

  • 【ぷらちな】『LUPIN the Third ‐峰不二子という女‐』vs「ルパン」/藤津亮太のアニメ時評‐帰ってきたアニメの門 第5回

    『LUPIN the Third -峰不二子という女-』の第1話「大泥棒VS女怪盗」は、不二子とルパン三世が互いを拳銃で狙い合うシチュエーションを幾度も繰り返す。 麻薬を使う怪しげな宗教のいかがわしい教祖が、彼と彼女の狙う獲物の障害として立ちふさがるが、そこには美女を飾る花一輪といった風情で、しょせんは、引き立て役。題はあくまでも、不二子とルパンが銃を向け合うという点にある。 アニメ化から40周年を超えた『ルパン三世』の新作は、峰不二子を主人公にした前日譚。シリーズ前半は、いわゆる“ルパン一家”が形作られる前の、出会いと関係の変化に主軸を置いたエピソードが続いている。キャラクターの言動も、(不二子、五エ門、それに銭形がキャスト交代したこともあり)若々しい。ルパンと不二子が幾度も銃を向け合うのは、まさにこの前日譚の前半の主題がそこにあるからだ。 これまでもスペシャル番組の中で前日譚が試みら

  • 【ぷらちな】冨田明宏氏インタビュー「新世代アニメ音楽シーンの現在」(1/5)/特集:アニメのゆくえ201X→

    アニメの現在と未来について作品制作のキーパーソンに聞く連続ロングインタビュー企画「アニメのゆくえ」。これまで、オリジナルアニメの隆盛や3DCGの挑戦など、さまざまな変化を取り上げてきました。今回は〝アニメ音楽〟の変化にスポットを当てていきます。 CDの売り上げ不振を受け変革期を迎えた音楽業界が試行錯誤を重ねている現在、アニメソングは既存の音楽ジャンルの垣根を越えた、今までにない魅力を備えた音楽のカテゴリーとして注目を集めています。とはいえ、その実態がまだまだ知られていないのもまた事実。アニメソングの面白さ、魅力はどんなところにあるのか? また、現在のアニメソングシーンはどのような盛り上がりを見せているのか? アニメソング専門の音楽誌『リスアニ!』に創刊から携わり、NHKラジオ第一「渋谷アニメランド」のパーソナリティや、「荒川強啓デイキャッチ」のコメンテイターなど、様々な形でアニメソングにつ

    hasetaq
    hasetaq 2012/04/25
    面白かった
  • 【ぷらちな】『銀魂』コンテンツじゃない、番組だ。/藤津亮太のアニメ時評‐帰ってきたアニメの門 第4回

    『銀魂’』が最終回を迎えた。復活はあるだろうか。復活があればうれしいが、終わらないでほしいと未練がましく作品にしがみつくのも『銀魂』らしくないような気がする。 『銀魂』は少年ジャンプに連載中の同名漫画を原作とするアニメ番組だ。宇宙人(天人)によって開国させられた日を舞台に、「万事屋銀ちゃん」のメンバー、坂田銀時、志村新八、神楽の3人がさまざまな事件に巻き込まれる内容で、2006年から4年間放送された。その後、1年間の再放送を挟んで2011年からは第二期『銀魂’』がスタート。その最終回が3月26日に放送された。 『銀魂』は反時代的なアニメだった。 たとえば「作品」と「商品」がある。同じアニメであっても、作り手が思いを込めて作り上げたという点に注目すれば「作品」となり、ファンがDVDなどを購入することでビジネスが完結するという部分に注目すれば「商品」と呼ばれる。 『銀魂』はこの「作品」「商品

  • 【ぷらちな】『男子高校生の日常』とキャラクター/藤津亮太のアニメ時評‐帰ってきたアニメの門 第2回

    作品の面白さとは別に、見ているとアニメについてつい考えてしまう作品というものがある。『男子高校生の日常』はそんな作品の一つだ。『男子高校生の日常』を見ていると、いつも「アニメにおけるキャラクターとはどういう存在なのだろう」という疑問が浮かんできてしまう。 『男子高校生の日常』は山内泰延の同名ギャグ漫画のアニメ化。タダクニ、ヨシタケ、ヒデノリという3人の男子高校生が、「あるある」と頷きたくなるようなシチュエーションからもう半歩踏み込んで、男子高校生のアホさを象徴するようなくだらないやりとりを繰り広げる内容だ。そのノリは、ギャグアニメというよりコントといったほうかしっくりくる。このコントを盛り上げているのが、この3人を含め、演技巧者がそろったキャスティングなのはいうまでもない。 たとえば『男子高校生の日常』第5話のアバンタイトルでは背中からキャラクターをとらえ、第6話ではロングショットでバレー

  • 【ぷらちな】『源氏物語千年紀 Genji』出﨑統監督インタビュー デジタル技術で描いた“古典”と“常識”

    『あしたのジョー』『エースをねらえ!』『宝島』『ガンバの冒険』など数々の名作で知られ、前田真宏さん、新房昭之さんらをはじめ、アニメ業界第一線のクリエイターたちから、今なお熱いリスペクトを捧げられ続ける巨匠・出﨑統さん。その目下最新作、『源氏物語千年紀 Genji』の放送終了&DVDリリースを記念して、作品に込めた思い、デジタル技術との付き合い方、アニメ業界志望者への強烈な“檄”を伺いました。とくとご覧あれ! ■「源氏物語」から『Genji』へ ――『Genji』という作品は画面の美しさが大きな魅力となっていますが、作品の立ち上げ段階では、どういったビジョンを念頭に映像化されたのでしょう? 『源氏物語』をアニメ化したい、という話をもらったときに、まずプロデューサーに言ったのは「着物の柄どうすんだよ。あれがちゃんとなかったら、やったって意味ないだろ」ということでした。でもこれは断るつもりだった

  • 【ぷらちな】Drawing with Wacom 008 岸田メルさんインタビュー

    ――岸田さんがイラストレーターとしてお仕事をされるようになったきっかけは? 昔から漫画やアニメのキャラクターの落書きが好きだったんです。大学でデザイン学科に進んだのですが、すぐに辞めてしまって……。2002年ごろ、ネットのお絵描き掲示板に出入りするようになって、そこで描いた絵を公開するために自分のWebサイトを作りました。2004年に雑誌「季刊エス」(飛鳥新社)から声がかかったのが、商業で絵を描いた最初です。創刊から知っている雑誌だったので、是非! と。 ――格的にイラストを描き始めた時には、すでにデジタル環境だったんですね。ペンタブレットを使い始めたのはいつからですか? 3ヶ月ほどマウスで描いて、ラチがあかないとIntuos2のA5サイズを購入しました。これを使えば絵が上手くなれるはず、みたいな(笑)。マウスよりも速く描けるようになって、決めたところにピタッと線が引けるのがよかったです

  • 【ぷらちな】Drawing with Wacom 010 蒼樹うめさんインタビュー

    ――うめ先生が漫画家の道に進まれるようになったきっかけは何ですか。 小学生の頃、「りぼん」(集英社)に憧れて、ノートに描いた漫画友達と見せあいっこしてました。それから「ウィングス」(新書館)のB6判のコミックスにときめくようになって。『ドラゴン騎士団』(押上美/新書館)が書店で平積みされているのを何だろう? と手にしたのが最初なんですけど、大きいサイズので、絵の雰囲気も少女漫画とちょっと違うし、ファンタジーとかジャンルも広くて。月刊の「ウィングス」は買えなかったので、季刊の「サウス」(新書館)を買って、高河ゆん先生のカラーページを切りぬいて保存したりしてました。 その頃に、「COMIC BOXジュニア」(ふゅーじょんぷろだくと)で同人誌というものを知って、アニメイトに委託されているを読んだりして、中学1年生にして晴海で開催されていたスーパーコミックシティというイベントに行ってしまっ

  • 【ぷらちな】帰ってきた『日常』/藤津亮太のアニメ時評‐帰ってきたアニメの門 第1回

    [第1回]帰ってきた『日常』 『日常』がNHK Eテレで始まった。 ご存じの通り『日常』は、あらゐけいいちの同名マンガを京都アニメーションがアニメ化した作品で、2011年4月から独立UHF局を中心に放送されたEテレ版は、全24話の同作を全12話に再編集して放送するという。 NHKはBSで他局で放送されたアニメを放送してきたことはあったが、地上波しかもEテレ(教育テレビ)で放送するのは非常に珍しい。 ここに現在のTVアニメを取り囲む状況が集約されているといっていい。 一つは番組編成と番組制作の関係。 TV局主導のもとで製作されるアニメを俗に「局製」という。’80年代の19時台に放送されていたアニメなどを想像してもらうとわかりやすいかもしれない。局や広告代理店が、どの時間帯に放送するかを想定し、そのために企画を決めて(原作を選んで)て、スポンサーを募り放送する。この時はまだ「どんな時間に番組を

  • 【ぷらちな】藤津亮太インタビュー「2011年もチャンネルはいつもアニメですか?」/特集:アニメのゆくえ2011→

    2000年以降、ゼロ年代を通じて制作環境のデジタル化や、パッケージのビジネス形態などアニメをとりまく環境は大きく変化してきました。そして2011年、この10年の成果を踏まえてこれからのアニメはどのように変わっていくのか? 制作現場から企画・流通など様々な形で「アニメ」に関わるキーマンへの取材を通じて、次のアニメの10年を探る連続企画「アニメのゆくえ2011→」。 まずは、2004年から2010年にかけてアニメ誌で連載された原稿を中心にゼロ年代のアニメを扱った時評を『チャンネルはいつもアニメ』(NTT出版)として書籍化されたアニメ評論家の藤津亮太さんに、これまでの10年と現状について伺うことで、次の10年の見取り図を描いていきます! 第2回 サンジゲン松浦裕暁代表インタビュー「二次元からサンジゲンへ―3DCGで描くアニメのNEXT」 第3回 ニトロプラス代表でじたろう氏インタビュー「混沌のア

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