1980年、大学に入ったばかりの頃。一年生のだれもが取る「商業通論第一」の授業を受けていました。先生は泰斗のT教授です。 「入学まもない諸君達にこれだけは行っておく!」 先生がバリトンの声を一段張り上げました。 大教室に響き渡ります。 「諸君達は、卒業して財務や経理の仕事、お金を扱う仕事をするようになるだろう。そのとき一本の電話がかかってくる。『資産運用をしませんか?』という話だ。そんなときにかぎって、諸君の座っている机の後ろにある金庫の中には会社のお金がある。しかも明後日までは使う必要のないお金だ。 最初の1回目は必ずお金が儲かる。明後日まで必要のないお金をほんの一日回すだけでサラリーマンの小遣いとしては十分以上のお金が手に入る。会社に迷惑をかけているわけではない、と自分には言い訳をしてしまう。二回目もお金を手にすることができるかもしれない。そうして回数を重ねて、気がつくと損をしている。
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