“坂本さん”のあれほどこわばった表情と声を目の当たりにしたのは、初めてだった――。2012年2月27日午後6時45分、東京証券取引所の一室。DRAMで世界シェア3位のエルピーダメモリの坂本幸雄氏(代表取締役社長 兼 CEO)は、視線を終始下に落としたまま、用意した文面を読み上げました。 「弊社は本日夕方、東京地方裁判所に会社更生法の適用を申請しました。関係者の皆さまには、ご支援をいただいたにもかかわらずこのような結果となり、心からお詫び申し上げます…」 型通りの文言を、時に詰まりながら沈んだ声で読み上げる姿は、いつもの坂本氏とは別人のようでした。同氏は我々メディアから見て、常に“肉声で語る”経営者だったからです。 そして坂本氏がこの文面を読み上げた瞬間から、世の中のほぼすべてのメディアが猛烈なエルピーダ・バッシングを始めました。「国費を投入しておいて、倒産とは何ごとか」。「企業を倒産させた
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