岸田文雄政権の発足から、1年余り。菅義偉氏からバトンタッチして上々のスタートを切った政権が、こんなに支持を失うとは、誰が予想しただろう。聞く力を売りにしたはずの首相は、今や「検討使」と皮肉られる。フリーライターの武田砂鉄さん(40)が見るのは、ブレていることに鈍感すぎる一国の宰相の姿だ。 「新しい資本主義やデジタル田園都市国家構想……、アレって、どこにいっちゃったんでしょうね」。東京・神田。とある出版社の一室。コーヒーを口にした後、武田さんは首をかしげた。ここ1年、ロシアのウクライナ侵攻や安倍晋三元首相の国葬、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の問題……と内憂外患に追われるうちに、岸田政権の看板政策は、すっかりカスミがかかってしまった感がある。 「去年の今ごろは、ノートをかざして『車座になって話を聞きます』なんて言う岸田さんに、有権者の期待が広がっていました。それが、もしかしたらノートに何