小説の読み方指南の良書、一冊で小説技法と批評理論の両方を俯瞰する。 読書本は多々あれど、ほとんど対象はノンフィクションに限られる。つまり、すばやく情報を吸収し、的確に批判するためのハウツーを宣伝している。書店の平台に乗っているコピー本のオリジナル、アドラー「本を読む本」を精読すれば事足りるかと→わたしのレビュー : 上から目線の「本を読む本」を10倍楽しく読む方法。 いっぽう、フィクション・小説だと話が違ってくる。小説の読み方を具体的にレクチャーする本は少ない。「小説を読む」という行為は個人的な体験とされているため、客観性を求められる批評がしにくい(と思われがちだ)。また、小説技法を味わうには、一定量の"修練"が必要で、教科的に身につけられるものではないとされる。 例えば、石原千秋「未来形の読書術」(レビュー)や平野啓一郎「本の読み方」(レビュー)あたりが小説の読書指南として挙げられるが、