(三省堂・3456円) 学問の大事さ思う「私流講書始」 昨年8月刊行のこの本を、年初に紹介しようとするのには理由がある。宮中行事「講書始の儀」になぞらえ、明治期の知の巨人・西周(にしあまね)の書「百学連環」が包含する世界を、ゲームクリエイターにして文筆家の著者に講じて貰(もら)おうという寸法だ。むろん講書始は、天皇が和漢洋の碩学(せきがく)から話を聴く儀式だから、それに擬すのは不遜に違いない。だが、学問の大事さを年初に思うには、私流講書始があってもよいのではないか。 西周とはどんな人か。明治軍制の設計者としては、まず山県有朋の名が挙がるだろう。その山県が軍人勅諭起草を託した者こそ西だった。ただ、西の名誉のため急いで付言すれば、勅諭の徳目中の悪名高い「忠節」の項は西の発案ではない。