世界の言語の数を知っているだろうか。なんとそれは、7000にものぼるという。 「亡びゆく言語を話す最後の人々」(原書房)という本で、著者のK・デイヴィッド・ハリソンはこう書いている。 ウィキペディアは250種類の言語で1070万本の記事を載せているが、その数は世界70000種類の言語のわずか3.6%にすぎない。人間の知恵、私たちの共有する知的財産のうち膨大な部分は、いまだに一度も、どこにも書きとめられていないのだ。 世界には、「文字」になっていない言語もたくさんある。ハリソンによると、それは世界の言語の8割にものぼるそうだ。 Top photo by Dietmar Temps しゃべることはできても、書きとめられない言語。そういう場所では、人間の知識や文化は人々の記憶の中だけにあり、そういう記憶が親から子へ、そして孫へと口伝えされてきた。 先住民族ユピク族は、北極という過酷な土地で600