僕は無個性な社会人だが、仮面の制作という少し変わった趣味を持っている。 「ベネチアンマスク」と呼ばれる、中世ヨーロッパの仮面舞踏会やカーニバルで使われていた、顔の上半分を覆うハーフマスクを作るのが好きなのだ。 あるとき、完成した作品を並べてみて、4つのテーマ別で分類できることに気がついた。 怒り・悲しみ・笑い・愛 (なるほど、こういうものを表現したかったのか……) それからは、テーマを意識して制作することを心掛けた。 独学で工夫を重ね、自信作と言えるような作品が少しずつ増えてくると、その仮面たちが、本来の役割を果たすところを見たい、と思うようになった。 はっきりした目当てもないまま、広大なネット空間をさまよい、ついに見つけたのが『マスカレード』という舞踏集団だ。ウェブサイトのトップページには、仮面風のステージメイクを施したダンサーたちの画像、そして──、 素顔で語るとき、人は最も本音から遠