「アートレス」なアートの存在 『アートレス―マイノリティ としての現代美術』 『オン・ザ・ウェイ── 川俣正のアートレスな旅』 川俣正という美術家がいる。おおよそ一人では作り得ない空間の大きさや時間の少なさという状況下で、おもに木材や木製家具などを既存建築物に付加するような作品=「プロジェクト」を1977年から作り続けてきた。彼には一人で作れる規模のもの──たとえば街に落ちている廃品を組み合わせて作る「フィールドワーク」シリーズや、キャンバスサイズの板上に自らの「プロジェクト」のスケッチ(アクソノメトリック図)を木材や画材を用いて展開するマケット群──も確かにある。しかし既存建築物に見合った規模、ときには土木工事にも匹敵する規模の作品を、複数の人間が携わる一種のワークショップである「ワーク・イン・プログレス」と呼ばれる手法で制作するのが中心である。 そうした規模の作品を制作する長大な期間に
![特集:建築とアートの新しい関係/「記録することの意味」天内大樹(日本学術振興会特別研究員/美学芸術学)(10+1 web site|テンプラスワン・ウェブサイト|)](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/99ef4a678fcfdab95a8e42ba84112ec3cb03cdea/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fwww.10plus1.jp%2Fimg%2Flogo_10plus1.gif)