# 10年近くに及ぶ戦いの末、ついにテレビは戦いに負けつつある。テレビが神であった時代は、ただ「こういう考え方が正しい」と繰り返し言えば、実際にそういう考え方が正しくなったし、「これが流行っています」と繰り返し言えば、実際にそれが流行って商売になった。テレビは大衆を愚民化し、洗脳し、世論操作を行うデバイスとして、素晴らしいパフォーマンスを発揮してきた。だが、その難度が近年大きく上がって来ている。もちろんいきなりゼロになるわけではないが、神託に耳を傾ける信者の数は、確実に減りつつある。 ただし、テレビ神の死後に広がる世界はユートピアではなく、比較的過酷な世界である。人は、自分自身が神とならない限り、大小の差はあれ、信じる神が必要となる。それは木像だったり、石像だったり、イワシの頭だったり、男だったり、女だったり、誰かの言葉や文章であるかもしれないが、いずれにせよ、全ての人間は信じる価値がある