日本語ラップの難しさ いとう 著者はデンマーク人とイギリス人だけど、英語圏で活躍している人たちだよね。英語は大づかみしやすい言語とも言える。「私はそう思わない、なぜならば」という語順だから。でも日本語は「これこれこういうわけで、違うと思うんだよね」というように結論が最後につく言語。我々ラッパーが一番最初に困った日本語の特徴でもあるんだけど。 宇多丸 そうでしたね。 いとう さらに日本語は膠着語で、ほとんど「だ」とか「じゃない」で終わるから、韻が踏みにくい。それで「そうは思わない、俺は」と倒置法を使うようになった。ちなみに、この倒置法はほんの10年ちょっと前までは、ライブでは観客に伝わらなかった。だけどこの頃は伝わるようになってる。日本語を聞く能力が変わったんだよ。 宇多丸 それと、日本語は文語的なものと口語的なものの乖離が激しいじゃないですか。口語のふんわりした構造に対して、文語は、漢語的