2010年7月2日パリ第7大学教授パトリック・ギヨマール氏の講演会が行われた。ラカンから教育分析を受けた精神分析家であるギヨマール氏は、ラカンが1960年に行った『アンティゴネ』解釈を批判的に読解した『悲劇的なものの享楽』の著者として知られている。「アンティゴネの肯定:純粋欲望、差異の欲望、分析家の欲望」と題された今回の講演において、氏はこの著作を出発点としつつ、ラカンによるこの悲劇の読解を再度検討し、そこから精神分析家の欲望とは一体どのようなものであるかを明らかにしようとした。 ギヨマール氏がまず強調したのは、ラカンの読解が位置する歴史的な文脈である。ラカンは1960年のセミネール『精神分析の倫理』において『アンティゴネ』読解に着手した。1960年といえば、アルジェリア戦争のただ中である。この戦争に対する批判的な機運が高まる中、妥協することなく兄の埋葬を要求し続けたアンティゴネは、絶対的