村上春樹『雑文集』(新潮社)は、なかなか読み応えのある「雑文」集である。 和田誠と安西水丸のイラストもかわいいし・・・ 大庭健先生の『私という迷宮』(専修大学出版局)に寄せられた「自己とは何か(あるいはおいしい牡蠣フライの食べ方)」やエルサレム賞受賞のあいさつの「壁と卵」、あるいはオウム問題や音楽についての、そして自著についての文章を読むと、村上春樹の小説が読みたくなってくるのであった。 なかでも、読み応えというか、考え応えというか、アタマを抱え込んでしまったのが、3ページにも満たない「柄谷行人」。 つまり、村上春樹が柄谷行人について書いた文章。 読みたくなりますね。 ところがこれがなんともヒトをくった文章なのである。 村上春樹ご本人は、この文章を超短編小説集『夜のくもざる』に「入れてもよかったんだけど、担当の女性編集者が柄谷氏のファンで「こんなの冗談にもなりません、まったくもう!」とあっ