逆転写酵素が発見された1970年以降、いわゆるセントラルドグマの書き換えを迫るような発見が相次いだ。DNAとRNAを主従関係でとらえる認識ーーすべての設計図を備えた神=王であるDNAに対し、あくまでも補佐的で従属的なRNA、という認識ーーの変更が迫られたのである。これと同様に、21世紀前半には、細胞とウイルスの主従関係ーーウイルスは、主たる宿主細胞がなければ増殖できないのだから、あくまでも「外からやってくる異物」であって、従属的である、という認識ーーもまた、変更を迫られ、逆転させられる、そうした発見が相次ぐことだろう。 地球上の海水1リットルには平均30億個のウイルスが存在する(地球上の海水には4×10の30乗個。1個のウイルスを10兆分の2ミリグラムと仮定すると総量2億トン)(山内一也[2018: 134])。むろん地球上の全生物(細菌など、細胞をもつものすべて)の個体数を桁違いに上回る