またしてもボルヘス。『伝奇集』と『不死の人』に続いて手にとったのは、1935年刊行の、ボルヘス最初の短篇集だった。かつて『悪党列伝』という邦題で刊行されていた本の文庫版で、旧題のほうが内容を正確に言い表していると思いながらも、この新題が持つ詩情には、ちょっと抗いがたい。その名も、『汚辱の世界史』。 汚辱の世界史 (岩波文庫) 作者: J.L.ボルヘス,中村健二 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2012/04/18 メディア: 文庫 クリック: 3回 この商品を含むブログ (9件) を見る ホルヘ・ルイス・ボルヘス(中村健二訳)『汚辱の世界史』岩波文庫、2012年。 この短篇集に収められている作品は、ボルヘスの純然たる創作というよりは再話であって、そういう意味ではトルストイの『イワンのばか』などに近い性格の本とも言えるだろう。だが、かつて『悪党列伝』という題だったということからも察せ
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