二〇一七年四月二十六日、韓国・済州島で銅像「最後の子守歌」の除幕式が行われた。ベトナム戦争で犠牲となった子を抱く母を形象化した百五十センチほどのこの像は、その姿から「ベトナム・ピエタ」とも呼ばれる。韓国軍による民間人虐殺を謝罪し、被害者たちを慰める思いを込めてこの像を制作したのは、韓国の彫刻家である金運成(キムウンソン)、金曙〓(キムソギョン、〓は日の下に火)夫妻。ふたりは、「あいちトリエンナーレ2019」の「表現の不自由展・その後」に出品されながらも、日本への「ヘイト作品」などとの非難をうけ展示中止に追い込まれた「少女像」の制作者でもある。 少女像が日本人を貶めようとする韓国人の偏見の発露である、と考える人々にとって、二つの像を同じ彫刻家が制作したことの意味を理解することは困難かもしれない。国家の加害を問うことは「ヘイト」であり、名誉を傷つける行為だとする発想からすれば、韓国人がベトナム