東本京史 「トラちゃん文庫」 「難波侠客伝」日本最後の侠客、大越龍蔵が悪に立ち向かう! 背中の昇り龍、二の腕のクレマチスを咲かせ男伊達をみせる。 クレマチスは策略の花、さて今日のクレマチスは…… この小説はフィクションです、実在とは関係ありません。 「飛 礫(つぶて)」 13 「醤油を買うのに一升瓶もって行くんか?」 龍蔵が訊ねた。 「まさか、醤油差しに入れてくれ言うては買に行けませんがな。 一升瓶で買うたほうが安いし、醤油や油を買うときは一升瓶ですんや。 これは貧乏人の知恵ですわ」 なるほどと、龍蔵とお爺がうなずいた。 「おっちゃんら、口ほどでもないな。 結局わたしには勝たれへんがな、修業して出直した方がエエわ」 二人は形無しや。 「そう言うたら龍ちゃん、いっこうに現れんな。 今日はコソちゃんの定休日やろか?」 「おっちゃん、コソちゃんて誰や?」 「最近な、この近所でコソ泥が出没して