東本京史　「トラちゃん文庫」 「難波侠客伝」日本最後の侠客、大越龍蔵が悪に立ち向かう！ 背中の昇り龍、二の腕のクレマチスを咲かせ男伊達をみせる。 クレマチスは策略の花、さて今日のクレマチスは…… この小説はフィクションです、実在とは関係ありません。 「言　　霊　（ことだま）」　　１９ 誠と雅夫は、市役所に出向き交渉したが、 即決はできないと言う。 ただ、そのような活動をしている自立援助ホームが有ると聞いた。 二人は、そのホームを訪れた。 代表の関根さんが姿をみせる、 二人は女性の代表者に少なからず驚いた。 挨拶もそこそこに質問が始まった。 関根さんによると、 『あなた達のように、 養護施設で育った子の共通の問題として、 高校に進学できる子より、進学できない子の方が、 問題を抱えてる子が多くて支援が必要だが、 そんな子供たちは、 公費で保証される施設には居ずらくなるらしい。 この自立支援援助

東本京史　「トラちゃん文庫」 「難波侠客伝」日本最後の侠客、大越龍蔵が悪に立ち向かう！ 背中の昇り龍、二の腕のクレマチスを咲かせ男伊達をみせる。 クレマチスは策略の花、さて今日のクレマチスは…… この小説はフィクションです、実在とは関係ありません。 「言　　霊　（ことだま）」　　１８ 誠と川上雅夫が行動を開始した。 自分たちが育てられた施設を訪れ、計画を説明した。 職員の中にはやっかみが有るのか、 本職が手を焼いてるのに、あんたらには無理やと、 否定的な考えの者もいたが、 比較的好感をもって迎えられた。 相談のあった記録簿を見せてもらい、訪問する家庭を列記した。 二人は、効率を考え二手に別れて調査を開始した。 結果は、夜の龍蔵との席で報告すればエエ」 二人はそれぞれ嫌な思いに直面した。 何の資格もない若者が家庭を訪問しても、 警戒されるだけで調査にならない。 何の権利があって調べに来るんや

東本京史　「トラちゃん文庫」 「難波侠客伝」日本最後の侠客、大越龍蔵が悪に立ち向かう！ 背中の昇り龍、二の腕のクレマチスを咲かせ男伊達をみせる。 クレマチスは策略の花、さて今日のクレマチスは…… この小説はフィクションです、実在とは関係ありません。 「言　　霊　（ことだま）」　　１７ 「ナンボここで愚痴っててもアカンわ。 世の中の正義に背く悪党を捕まえて、 チョットでも多くの子供たちを助ける、 この事業の先頭に立って頑張って欲しいんや。 とりあえずは二人で相談しながら、 警察や役所、各施設に相談や情報があった件から順次当たって、 調査不足で落ちこぼれが無いか確かめたらエエと思うんや。 煮え湯を浴びせられた女の子の事件も、 近所の住民の聴き取りによると、 虐待や無いかと疑うような症状が有ったんや。 届け出を受けた警察官が、家庭を訪問したんやが、 何の疑いも有りませんでしたと、さっさと帰ってき

東本京史　「トラちゃん文庫」 「難波侠客伝」日本最後の侠客、大越龍蔵が悪に立ち向かう！ 背中の昇り龍、二の腕のクレマチスを咲かせ男伊達をみせる。 クレマチスは策略の花、さて今日のクレマチスは…… この小説はフィクションです、実在とは関係ありません。 「言　　霊　（ことだま）」　　１６ 「あんたも苦労してきたんやな。 貴重な体験や、これから役に立つこと間違い無しや。 それで建築屋は何で辞めたんや？」 龍蔵が訊ねた。 「元々力仕事はやったことないし、 宿舎にいてる仲間は荒くれもんが多いですやろ。 夜は酒か博打、そうか喧嘩ですわ。 ここはワシの居場所やない思たんです」 川上がうな垂れる。 「まぁ見たとこ体力もなさそうやし、 そんな考えも無理ない事や。 そんで建設作業員を辞めてヤクザになったんかいな？」 龍蔵が酒を注いでやった。 「ヤクザになりとうてなった訳やないんです。 どこに就職しようとしても

東本京史　「トラちゃん文庫」 「難波侠客伝」日本最後の侠客、大越龍蔵が悪に立ち向かう！ 背中の昇り龍、二の腕のクレマチスを咲かせ男伊達をみせる。 クレマチスは策略の花、さて今日のクレマチスは…… この小説はフィクションです、実在とは関係ありません。 「言　　霊　（ことだま）」　　１５ 「ワシは、児童養護施設で育ちました。 誠さんもそうらしいけど、決して楽園やなかったんです。 小学生から高校生まで五十人ほどの共同生活でした。 小学生のころは、 中学生のヤンキー姉ちゃんらが怖かったんです。 いつも顎で使われて、使い走りばっかりやらされました。 チョットでも逆ろうたら、殴られたり蹴られたりですわ。 施設の先生に訴えても、相手にしてくれませんのや。 施設の職員が、ヤンキー姉ちゃんや、 顔を利かせて親分ズラで威圧する高校生は、 みて見ん振りですんや。 この子らが施設を離れた時、仕返しされるんやないか

東本京史　「トラちゃん文庫」 「難波侠客伝」日本最後の侠客、大越龍蔵が悪に立ち向かう！ 背中の昇り龍、二の腕のクレマチスを咲かせ男伊達をみせる。 クレマチスは策略の花、さて今日のクレマチスは…… この小説はフィクションです、実在とは関係ありません。 「言　　霊　（ことだま）」　　１４ 「ほれ見てみ、この記事や」 龍蔵が夕刊を指さした。 『四歳児の顔に煮え湯をかける……』 我が子に煮え湯を浴びせるなんて、狂気の沙汰やで。 こんな親、五右衛門やないけど、 釜ゆでの刑にせなアカンわ。 こんなんが正に、君らがやろうとしてる、 虐待の子供らを救う行動や。 この子は、さっき亡くなったとテレビでやってた。 こんなニュースばっかりや。 抵抗できん幼児に危害を加えて、平気で生きてる。 こんなん人間やないやろ、野獣でもこんなことせんで。 赤ん坊を川に投げ捨てたり、 犬小屋モドキの小屋に閉じ込めて、 飯もろくろ

東本京史　「トラちゃん文庫」 「難波侠客伝」日本最後の侠客、大越龍蔵が悪に立ち向かう！ 背中の昇り龍、二の腕のクレマチスを咲かせ男伊達をみせる。 クレマチスは策略の花、さて今日のクレマチスは…… この小説はフィクションです、実在とは関係ありません。 「言　　霊　（ことだま）」　　１３ 「何を考えましたん？」 誠が質問する。 「誠君が、虐待なんかで辛い経験をした子供たちを救おうと、 身を捧げようとしてる。 川上君が、ヤクザの道を断念して真面目に生きようとしてる。 二人は、未知の世界に挑戦しようとしてるんや。 その気持ちを融合さしたら、 どえらい力になる気がするんや。 そう思うたワシは親分に話して、引き受ける返事をしたんや。 ワシは親分に信用がある。 そやから一も二も無く承諾や。 その川上君を、カタギになった祝いに呼んだんや。 歳の差もないし、川上君はカタギの生活が始まっても職なしや。 誠君の

東本京史　「トラちゃん文庫」 「難波侠客伝」日本最後の侠客、大越龍蔵が悪に立ち向かう！ 背中の昇り龍、二の腕のクレマチスを咲かせ男伊達をみせる。 クレマチスは策略の花、さて今日のクレマチスは…… この小説はフィクションです、実在とは関係ありません。 「言　　霊　（ことだま）」　　１２ 誠は、勉強不足を痛感した。 自分のような志を持った先輩が、 未だに願いがかなわんと苦労してる。 何の知識もない人間が立ち向かうんは、 余りに無謀やった気がする。 龍蔵さんが、そこを心配してたんや。 誠は、龍蔵の前で頭を下げた。 「何を気の弱いこと言うてるんや。 若い時はいろんな事経験して、 それを肥やしにして大成していくんや。 まだまだこれからやないか、不幸な子供らを助ける事業やったら、 ワシも一肌脱いで応援さして貰うと約束したやないか。 実はな、ワシが懇意にしてるヤクザの親分からの依頼や。 一人の若い衆が、

東本京史　「トラちゃん文庫」 「難波侠客伝」日本最後の侠客、大越龍蔵が悪に立ち向かう！ 背中の昇り龍、二の腕のクレマチスを咲かせ男伊達をみせる。 クレマチスは策略の花、さて今日のクレマチスは…… この小説はフィクションです、実在とは関係ありません。 「言　　霊　（ことだま）」　　１１ 誠は、龍蔵の期待に応えたいと、 児童相談所の高橋先生を訪ねた。 「志は立派やけど、 虐待を受けた子を助け出すんは大変なことなんや。 自分が施設に入ってた経験がある言うても、 誠君は、虐待を受けたわけやない。 虐待を受けた子の心は、人が思う以上に傷んでるるんや。 そやから、接するんも随分神経を使うんや。 性虐待なんかを受けた場合、 児童の保護を目的とする児童相談所、 犯人検挙に懸命な警察、 逮捕されて、有罪の証拠を得たい検察と、 三者三様に被害者の子供を個別に聴取する。 子供は、思い出すだけでも身体が震えるよう

東本京史　「トラちゃん文庫」 「難波侠客伝」日本最後の侠客、大越龍蔵が悪に立ち向かう！ 背中の昇り龍、二の腕のクレマチスを咲かせ男伊達をみせる。 クレマチスは策略の花、さて今日のクレマチスは…… この小説はフィクションです、実在とは関係ありません。 「言　　霊　（ことだま）」　　１０ 「えらい能書きばっかり言うたが、 誠君が失敗せんように一生懸命なんや。 人のために努力すると、ウイルスの抗体値が増えて、 幸せになる言うたやろ。 アドレナリンも増えると言われてるんや」 また酒を口にやる。 「何や？　そのアドちゃんわ？」 お銀が口を尖らす。 「アドちゃんて、友達みたいに言わんとってくれるか。 アドちゃんはドイツ語やで。 ホルモンの一種で、高揚心を高めて幸せに感じるんや。 人に喜ばれて自分も幸せを味わう。 これ以上の喜びは無いんと違うか。 誠君がこの思いを成功させるには、 人のために尽力した、最

東本京史　「トラちゃん文庫」 「難波侠客伝」日本最後の侠客、大越龍蔵が悪に立ち向かう！ 背中の昇り龍、二の腕のクレマチスを咲かせ男伊達をみせる。 クレマチスは策略の花、さて今日のクレマチスは…… この小説はフィクションです、実在とは関係ありません。 「言　　霊　（ことだま）」　　９ 「誠君の心意気には賛同するし、目的が人助けや、 話聞いたら協力せんわけにはいかん。 そやけどな、これを実行するんは容易な事やない。 君が体験したように、施設に入る子供たちは一向に減らん。 そうかと言うて、政府が全く救済してないんか言うと、 そうでもない。 手当をすれど、助けを求める子供らが多すぎるんや。 政府の政策が悪いのも一因やが、 無理解な親が増えてるんが大きな原因や。 戦後のドサクサの中やと、 小さいころから苦労して育ったやろ。 食いもんが無うて、芋のツル食べて育った子は、 チョット裕福になって、麦飯や白

東本京史　「トラちゃん文庫」 「難波侠客伝」日本最後の侠客、大越龍蔵が悪に立ち向かう！ 背中の昇り龍、二の腕のクレマチスを咲かせ男伊達をみせる。 クレマチスは策略の花、さて今日のクレマチスは…… この小説はフィクションです、実在とは関係ありません。 「言　　霊　（ことだま）」　　８ 「桜ちゃん、よう寝てるわ」 お銀が、毛布を直してやる。 「何や言うてるで、寝言やな。 面白いわ、寝てるのに『ねうねう』言うてるわ。 眠い眠い言うてるんやろか？」 お銀が顔を近づける。 「ワシには、ニョウニョウと聞こえるな。 この子ドエライ子かもしれんで」 龍蔵が驚きの目でみる。 「何やの、そのニョウニョウ言うんわ」 お銀は意味が解からず訊いた。 「平安時代の源氏物語、紫式部の作や、知ってるやろ。 ニョウニョウといとらうたげに（かわいらしく）鳴けば……、 と、ネコの鳴き声を表現したけど、 鳴き声は、聞く人によって

東本京史　「トラちゃん文庫」 「難波侠客伝」日本最後の侠客、大越龍蔵が悪に立ち向かう！ 背中の昇り龍、二の腕のクレマチスを咲かせ男伊達をみせる。 クレマチスは策略の花、さて今日のクレマチスは…… この小説はフィクションです、実在とは関係ありません。 「言　　霊　（ことだま）」　　６ 「誠君の計画に大賛成したんも、 人助けは、巡りまわって自分も幸せにしてくれるからや。 今年は申年やろ、猿も喧嘩するけど、 しばらくすると何事も無かったかのように平然としてる。 人間やと、根に持ったり酷うなったら怨念に発達してしまう。 猿に見習うことはギョウサンあるんや。 人間は、哺乳類ヒト科の一種や。 ヒト科には、ヒト、チンパンジー、ゴリラ、オランウータン、 その四種類しかおらん。 この四種類は共通の先祖から分かれて、 それぞれの環境に適応して今の姿になったんや。 もっと詳しゅう言うと、 人とチンパンジーのゲノ

東本京史　「トラちゃん文庫」 「難波侠客伝」日本最後の侠客、大越龍蔵が悪に立ち向かう！ 背中の昇り龍、二の腕のクレマチスを咲かせ男伊達をみせる。 クレマチスは策略の花、さて今日のクレマチスは…… この小説はフィクションです、実在とは関係ありません。 「言　　霊　（ことだま）」　　５ 「その計画て何やの？」 お銀が訊ねる。 「自分らが施設で育ったせいか、 最近世の中を賑わしてる子供たちへの虐待に、 居たたまれんようになったんや。 虐待を受けた子の受け入れ先をつくろうと準備してるんや。 恵まれん子どもらを助けて、 自分の体験を生かそうとしてるんや。 神さんは、粋なお恵みを与えてくれてるんや」 龍蔵がお銀の酌を受けた。 「神さんが？」 お銀が訊ねる。 「そうや、人を助けることによって、人間は幸福を感じるんや。 チョット難しいかもしれんが、この幸福感を利他性幸福いうんや」 お銀が首をかしげる。 「

東本京史　「トラちゃん文庫」 「難波侠客伝」日本最後の侠客、大越龍蔵が悪に立ち向かう！ 背中の昇り龍、二の腕のクレマチスを咲かせ男伊達をみせる。 クレマチスは策略の花、さて今日のクレマチスは…… この小説はフィクションです、実在とは関係ありません。 「言　　霊　（ことだま）」　　４ 「さぁー、ギョウサン、オトチ玉もうたし、 ちょっと銀行へ行ってキマチュワ」 桜が立ち上がる。 「銀行へ何しに行くんや？」 龍蔵が笑いながら訊ねる。 「おっちゃん、銀行言うたら貯金やがな。 ギョウサンお金貯めて、ケッチョン資金にせなアカンのや」 桜が立ったまま答える。 「ケッチョンて何や？」 お銀が訊ねる。 「おばちゃん、ケッチョン知らんのかいな？ 男前と、ワタチみたいなベッピンがケッチョンして幸せになるんや。 可愛い子ジョモができて、一生懸命子チョダテするんや。 そんなんチランかったらケッチョンできひんで」 お

東本京史　「トラちゃん文庫」 「難波侠客伝」日本最後の侠客、大越龍蔵が悪に立ち向かう！ 背中の昇り龍、二の腕のクレマチスを咲かせ男伊達をみせる。 クレマチスは策略の花、さて今日のクレマチスは…… としの　はじめの　　　　ぎょけい 年　首　御　慶 本年も宜しゅうお願い申します。　龍蔵 （年首御慶（としのはじめのぎょけい） 年賀状は、古（いにしえ）の平安時代には存在しており、 冒頭には、新年おめでとうございます。の意味で、 「年首御慶」と記されていました。 「言霊（ことだま）」は、 不思議な言葉に宿る霊域であり、唱える事によって、 言葉通りの事象がもたらされると信じられてきました。 「言霊のたすくる国ぞ」と、万葉集にも詠われているように、 古代から神聖な霊域として言葉を崇めたようすが伺えます。 この小説はフィクションです、実在とは関係ありません。 「言　　霊　（ことだま）」　　３ 「ワタチ、ジ

東本京史　「トラちゃん文庫」 「難波侠客伝」日本最後の侠客、大越龍蔵が悪に立ち向かう！ 背中の昇り龍、二の腕のクレマチスを咲かせ男伊達をみせる。 クレマチスは策略の花、さて今日のクレマチスは…… としの　はじめの　　　　ぎょけい 年　首　御　慶 本年も宜しゅうお願い申します。　龍蔵 （年首御慶（としのはじめのぎょけい） 年賀状は、古（いにしえ）の平安時代には存在しており、 冒頭には、新年おめでとうございます。の意味で、 「年首御慶」と記されていました。 「言霊（ことだま）」は、 不思議な言葉に宿る霊域であり、唱える事によって、 言葉通りの事象がもたらされると信じられてきました。 「言霊のたすくる国ぞ」と、万葉集にも詠われているように、 古代から神聖な霊域として言葉を崇めたようすが伺えます。 この小説はフィクションです、実在とは関係ありません。 「言　　霊　（ことだま）」　　２ 「龍のおっち

東本京史　「トラちゃん文庫」 「難波侠客伝」日本最後の侠客、大越龍蔵が悪に立ち向かう！ 背中の昇り龍、二の腕のクレマチスを咲かせ男伊達をみせる。 クレマチスは策略の花、さて今日のクレマチスは…… としの　はじめの　　　　ぎょけい 年　首　御　慶 本年も宜しゅうお願い申します。　龍蔵 （年首御慶（としのはじめのぎょけい） 年賀状は、古（いにしえ）の平安時代には存在しており、 冒頭には、新年おめでとうございます。の意味で、 「年首御慶」と記されていました。 「言霊（ことだま）」は、 不思議な言葉に宿る霊域であり、唱える事によって、 言葉通りの事象がもたらされると信じられてきました。 「言霊のたすくる国ぞ」と、万葉集にも詠われているように、 古代から神聖な霊域として言葉を崇めたようすが伺えます。 この小説はフィクションです、実在とは関係ありません。 「言　　霊　（ことだま）」　　１ 正月の住吉大

東本京史　「トラちゃん文庫」 「難波侠客伝」日本最後の侠客、大越龍蔵が悪に立ち向かう！ 背中の昇り龍、二の腕のクレマチスを咲かせ男伊達をみせる。 クレマチスは策略の花、さて今日のクレマチスは…… 「杜若」は、本日で完結いたします。 新年元旦からは、「言霊（ことだま）」が始まります。 今年も、講読ありがとうございました。 良いお年をお迎えください！！ この小説はフィクションです、実在とは関係ありません。 「杜若（かきつばた）」　　３１　　完結編 「清吉ハン、全員逮捕して護送中やそうですわ。 改めて乾杯しましょうか」 龍蔵が、喜びいっぱいの酒を注いだ。 「ただ案じた通り、護送は捜査員に任せて、 鬼頭邸に向かうらしいですわ。 部長から直々に、 辛いやろうが君が行った方が、鬼頭君も納得するやろ。 と、言われたそうですわ。 ワシ、何か胸騒ぎがするから、ちょっと行ってきますわ。 カタが付いたら直ぐに帰

東本京史　「トラちゃん文庫」 「難波侠客伝」日本最後の侠客、大越龍蔵が悪に立ち向かう！ 背中の昇り龍、二の腕のクレマチスを咲かせ男伊達をみせる。 クレマチスは策略の花、さて今日のクレマチスは…… この小説はフィクションです、実在とは関係ありません。 「杜若（かきつばた）」　　３０ 「昼間っから飲んでて宜しいんか？ もうすぐ取引が始まって、貨物船の船底は大騒動ですで」 韋駄天が、イライラしながら口を尖らせた。 「心配せんでも宜しいわ。 ワシらは高見の見物してたら宜しいんや。 こっちからは、捨て駒のヤクザに出所後の銭も与えてあるし、 ボスや他の組織の連中は一時期解散して、 世界中のどこか知らんけど、高飛びしましたわ。 何年後かに再結成したら、みんな元に戻ってきますんや。 そろそろ取引が始まる時刻やけど、 相手もボスは来てないはずや。 今までに無い大取引やから、注意して臨んでますんや。 奴らもバ