ここから本文です。 学生時代の友人で、酒に酔うといつも将来の夢を語る人物がいました。彼は出版社を作りたいのだそうです。世界中の様々な昆虫を網羅した、誠実な図鑑を延々と出版し続ける、それだけの出版社だそうです。そして本当に昆虫が好きな人に買ってもらいたいとのこと。なんだかロマンチックな話で、彼はいつもそればかり言うので、ある時僕は、彼に昆虫のどういったところがそこまで好きなのかと訊ねました。すると彼は微笑しながらこう答えたのです。「虫なんか別に好きじゃない。むしろ嫌い」人間とは奥深いものだと知りました。 学生時代、窓に小石が投げつけられたり、郵便受けに砂利が入っていることがありました。これはどういういたずらだろうと、出版社を作るのが夢で恋人とディズニーランドに行くための資金を冷蔵庫に貯めている友人と二人、じっと待ち伏せていたら、下の階の住人の仕業だと判明したのです。しかし喋ったこともない相手
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