元医師の父が選んだ「自然死」 【後編】 延命治療は必要ない---医師の親子が考える「理想の死に方」 久坂部 羊(作家・医師) 【前編】はこちらをご覧ください。 前立腺がんの発見に安堵 その後、父はまた気ままな生活を送っていたが、二○一一年十月、急に排尿ができなくなった。医療嫌いの父もこのときばかりはどうしようもなく、近くの病院で尿道に管を入れてもらい、溜まった尿を出してもらった。それだけで終わればよかったのだが、専門医の診察を受けたほうがいいと言われ、市民病院の泌尿器科を紹介された。 父は大きな病院には行きたくないようだったが、また尿が出なくなると困るので、しぶしぶ市民病院に行った。さんざん待たされ、血液検査をした結果、PSAという腫瘍マーカー(*1)の値が一○○あり(正常値は五以下)、前立腺がんが確定的となった。 私は泌尿器科の部長(たまたま私の大学の先輩だった)からそのことを知らさ