ダナ・ハラウェイが『困難(トラブル)と共にあること』(2016)の最終章に置いたのは、一篇のSF小説であった。2013年にフランスで開催されたワークショップで共作され、「カミーユの物語」と題されたこの物語が描くのは、近未来から数世紀先まで、地球上の動植物が大絶滅を迎える中、生態系と調和すべくゆるやかに人口を抑制して生きてゆく人々と、そのコミュニティで生まれ育つ5世代のカミーユである。主人公ともいえるカミーユたち「堆肥(コンポスト)の子ども」は、絶滅に瀕している種の遺伝子を組み込まれた共生生物として生まれた存在であり、共生相手の種が絶滅したとしてもその種が持っていた特徴を身体化しつづける。 共生、絶滅、そして記憶というテーマをランドール・マンローのウェブコミックから明確に引き継ぎつつも*1、題材を蘭の花から人に置き換えサイエンス・フィクションの趣向を加えた「カミーユの物語」からは、ハラウェイ