数学ガール ガロア理論 [著]結城浩 夏休みの青春物語、と言っていいだろう。数学好きの中高生が「ガロア理論」を理解しようと一段ずつ階段を上る姿を描くのだから。 20歳で夭逝(ようせい)した天才ガロアは決闘で命を落とす直前まで論文を推敲(すいこう)していたという。5次以上の方程式では「解の公式」が求められないことは知られていたが、ガロアはさらに進んで方程式が代数的に解ける必要十分条件を明らかにした。その道具立てが後に花開き「理論」に至る。物語を追えば数学的な高みからの景色を垣間見る所まで連れていってもらえる。 主人公たちが夏休みの課題として取り組む「あみだくじ」の数学的な解釈から始まり、二次方程式の解の公式など中学数学を経て、理論の基礎概念「体」「群」に繋(つな)ぐ絶妙な筆さばきは数学と小説を見事に調和させている。 「ガロアは21歳になれなかった」と少女は憤る。その時、普遍の数学世界と、一度