ヒトとチンパンジーのDNAは99%まで一致している。それを知った女子大生が「チンパンジーとの子供を自分の子宮で育て、観察記を卒論にまとめたい」と言い出した。卒論が書き上がったら中絶するつもりだという。彼女の望みは「命をどう扱うか」を問いかける。哲学者の岡本裕一朗氏がビジネスパーソン向けに行った講座から一部を紹介しよう――。(第2回、全3回) ※本稿は、岡本裕一朗『答えのない世界に立ち向かう哲学講座』(早川書房)の第4講「ゲノム減編集時代の生命倫理」を再編集したものです。 チンパンジーとの子どもを産みたい女子大生 【岡本】生物遺伝学者のリー・シルヴァーは、あるとき次のような講演をしました(シルヴァー『人類最後のタブー』より)。 「ヒトのDNAとチンパンジーのDNAは99パーセントまで同じである。チンパンジーとは染色体が似通っている。したがって、二種の交配による子どもは生存可能である。ヒトの精