新卒者が入社の辞退に追い込まれたり、長期の自宅待機を命じられて退職したりしている。内定取り消しや解雇ではなく自主的に辞めさせるため、統計に表れない「サイレント内定取り消し」だ。コロナ禍が水面下で若者を追い詰める構図で、再び就職氷河期を迎える懸念も出ている。(渥美龍太) 「辞退をご希望される方はご連絡下さい」。東京都内のIT企業の正社員に内定した男性(22)は、研修の開始がコロナ禍で延期される中、4月の緊急事態宣言直後に会社から届いたLINEに違和感を持った。何も始まっていないのに入社の辞退を促していた。 5月末に始まった研修も初心者に丁寧に教える触れ込みが、専門用語が並ぶ高度な内容と叱責を交えた指導に辞退者が続出。男性は「センスがない」「諦めるなら今のうち」と詰められ、「心が折れた」。給料も払われぬまま入社を断念、地元の大阪に帰った。