私が地震予測をはじめた転機は、2011年3月11日の東日本大震災だった。 地震予測の研究自体をはじめたのは2002年からだったが、最初の10年は、実際に予測をしていたわけではない。このあいだは、大きな地震が起きるたびに荒木春視博士と電子基準点データをひも解いて、地震の前の異常な変動、いわば前兆が起きていたのかどうかの検証研究を事後的に行っていた。 つまり、地震の「後追い」の研究を続けていた私が、地震の「予測」にのめり込むきっかけとなったのが東日本大震災だった。 前回までのコラムでは、衛星測位を活用した最先端の測量技術が、いかに地震予測に役立つかを説明してきた。今回のコラムでは、いよいよ地震予測にのめり込んでいく経緯と背景について述べていきたい。 そして、その原動力となったのは、なぜ厳しい批判を覚悟で地震の異常な前兆を世間に向けて発信しなかったのだろうか、という後悔の念だった。 変人扱いされ