リチャード・セネット著/森田典正訳(大月書店) サブプライムローン問題に端を発したアメリカを中心とする全世界的な金融危機は、不良債権の額が120兆円にも及ぶ可能性が出てきていることもあり、深厚な様相を呈しつつある。アメリカ連邦制度準備理事会の前議長であったグリーンスパンが、今回の危機が戦後最大のものになるかもしれないと警告を発していることは、そうした危機の深刻さを裏書するものだといえよう。 それにしても今回の金融危機はなぜ起こったのだろうか。もちろん事実的にいえば、低所得者向け住宅ローンであるサブプライムローンにおいて、土地・住宅バブルの崩壊に伴なう住宅価格の低下のために返済不能者が急増し、その結果負債が急速に拡大してしまったことがきっかけになっているのは明らかである。サブプライムローンの不良債権化に伴ない、サブプライムローンを組み込んだ様々なファンドや債権も不良化し、しかもそれがリスク分