1 はじめに 今月は、ジニ係数とローレンツ曲線について解説します。ジニ係数やローレンツ曲線は、経済活動の成果である国全体の所得が各世帯にどのように分配されているのかを調べるときに、最もよく用いられる指標です。 近年、人口構成の高齢化や雇用形態の変化、核家族化の進行などに伴い、世帯間の所得格差が増加しつつあることが報告されています。昨年6月、厚生労働省は、再分配を行なう前の所得(当初所得)の格差をジニ係数で測って、これが、調査開始以来、最も高い(所得格差が大きい)値を示していることを明らかにしました1)。また、京都大学の橘木教授はジニ係数の国際比較から、一般的な予想に反して日本の所得分配は国際的にみて必ずしも平等ではないことを指摘しています2)。 以下では、これらの分析で用いられているジニ係数やローレンツ曲線の意味と、これによって所得格差を測ることの経済学的な根拠についてお話しいたします。