ヒップホップの詩人たち [著]都築響一 前著『夜露死苦現代詩』の末尾近くで、著者は日本語ラッパーのダースレイダーに取材し、彼の詩を紹介した。いまや多くのラッパーはフリースタイルと呼ばれる即興詩(しかも脚韻を踏む)をリズムに乗せて繰り出し、「からだと直結した言葉」を紡ぐ。 そうしたラッパーたちの生い立ちと、そこからひねり出される切実な詩の世界を丹念に追ったのが今回の『ヒップホップの詩人たち』である。 近世までは俳諧や和歌の他に例えば狂歌があり、いわばストリートに匿名の歌が貼り出され、誰とも知れぬ者が社会や人物を嘲笑していた。現代のラップ用語で言えば痛快に“ディスっていた”わけだ。 しかし文明開化の過程でそうした反抗精神も、他の短詩型の文芸と共に評価を下げられ、特に“地下(じげ)の者たち(庶民)”が作り出す詩の批評性も消えがちになった。 一方で現代詩が生まれ、優れた詩を世に送り出したが、やがて