シャーロック・ホームズ・シリーズの邦訳は、多くの出版社によって刊行されてきました。現在入手可能な文庫版のリストと特徴を、出版社別にまとめてみました。各社により邦題に違いがあり、必ずしも原題の直訳とは限りません。また、どこが特に優れているということもありません。これから読んでみようという方の参考になればと思います。 創元推理文庫 ―― 訳者 阿部知二;深町眞理子 古くから文庫版を刊行している老舗。『シャーロック・ホームズの事件簿』だけは著作権の関係で長らく刊行できなかったが、ドイルの没後60年に当たる1990年に著作権が切れ、翌1991年にようやくシリーズ全編が刊行された。当初の訳者である阿部知二氏(1973年没)に代わり、『事件簿』は深町眞理子氏が訳者を務めている。 時代がかった雰囲気のある訳文がやはり魅力。刊行時期が新しい『事件簿』を除くと字が小さいのが難点だが、2006年4月に『緋色の