粕川 この本は、向田邦子さんのエッセー集で、どのお話もとてもおもしろいのですが、とくに表題作の「父の詫び状」という話が好きです。 ある冬の日、亭主関白の父親が連れてきた仕事仲間が、明け方、酔いつぶれて、玄関に粗相し、吐瀉物が敷居にいっぱい凍り付いていた。それを母親がひび割れた手で掃除をしている。こんなことをさせている父親に腹をたて、娘(向田邦子)が手伝う。その後、東京へ戻ると、父親から「此の度は格別の御働き」と書かれ、朱筆で傍線が引かれていた手紙が届いた……というお話。 お父さんが、本当は「すまない」という気持ちを持っていたことに気づき、読んでいるこちらはぐっとくるのに、それを向田さんがとくに感情を込めずたんたんと語っているところが「かっこいい!」と思いました。女性でもこんなかっこいい文章を書けるんだなって。
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