――『風立ちぬ』はメッセージ性が強くて、今の時代に宮崎さんが問うものだったのですか? 宮崎: なんで作ったのか、忘れてしまったんですけど(笑)。 あのね、ゼロ戦の呪縛から、完全に解放されましたね、ぼくは。小学校のときから、ゼロ戦っていうのは、不思議な霊力を持ってて、ずっとなにか付きまとってましたけど。でも、今はゼロ戦はどうでも良い、という感じになりました。ぼくだけ除霊しても、しょうがないんですけど。 ――ゼロ戦の呪縛っていうのは、どういうものだったんですか? 宮崎: 「ゼロ戦は凄かった」って神話があるだけじゃないんですよ。それが特攻に散々使われ、あるときはアメリカの飛行機を凌駕して、神業のような空中戦もやってる飛行機です。それから、日本の航空技術が、個人のセンスによって世界の水準と並んで、一瞬だけ鼻さが出た。瞬間ですよ。たちまち向うは進むから、そのままいれば置いてかれるんですけど。 それで