この世が始まって以来、最も淫らで穢らわしい物語。 乱読と、うそぶくわりに同ジャンル。気づいたら、似たよな本を読んでいる、狭く小さい殻の中。カニは甲羅に似せて穴を掘る。取捨選択でなく、自分の周囲に壁を築く読書。趣味なんだから引きこもるのは構わないが、その井戸で世界の中心を叫ぶ愚かしさ。狭窄に気づかない書評からドヤ顔が滲む―――これ全て、わたしのこと。 なので、自分を壊す本を選ぶ。殻を砕き、やわらかいエゴを引っ張り出し、押し広げる、自己を拡張する読書。フランツ・カフカは言う、「頭ガツンと殴られるような本じゃなきゃ、読む価値がない」。意図的に手にする劇薬本が、わたしの心を抉りだす。 「読まなきゃよかった」「読んだという記憶を消し去りたい」───そんな本を劇薬本と呼ぶ(劇薬小説、トラウマンガも然り)。期待外れの壁投げ本(くだらなくて壁に投げるような本)ではない、読んだら気分が悪くなるやつ。ベストは