時々、懐かしく想い出すことがある。 今住んでいる武蔵野の田舎に引っ越して間もない頃、駅からアパートまで歩いて30分近くかかる一本道のちょうど中程に、小さな個人経営のレンタルビデオ店があった。一般映画とTVドラマシリーズ等のスペースが約20畳ほどといったところだろうか。それでも最新のハリウッド映画はもちろん、黒澤、小津といった過去の名作邦画もかなりの品揃えで、あった。ATG時代の大島渚も、そこで何本か再見した記憶がある。倉本聰脚本による70年代のTVドラマ『前略おふくろ様』を、シリーズすべで観直したのもその店があったからだし、今ではもう観るのは難しいかもしれない、松本人志の『頭頭〈とうず〉』もそこで借りた。デヴィッド・リンチの『ツイン・ピークス』がいつも貸し出し中で、続きが借りられずやきもきしたのも良い想い出だ。 そして──、 お馴染みのあの〈暖簾〉の向こう側のスペース、それが畳10畳ぶんく