東海道から甲府へつながる「鎌倉往還」の途中に「御坂峠」がある。山梨県富士河口湖町と笛吹市にまたがる「御坂(みさか)峠」。昔なら東海道から甲府へつながる鎌倉往還の途中で、現在は国道137号の旧道となる。富士河口湖町側の新御坂トンネル手前から旧道に入り、車で15分ほど進むと、格別の富士山がそびえる。この眺望に旅人の心が洗われるのは今も昔と変わらない。作家、井出孫六氏は昭和57年出版「日本百名峠」でひとつに数えている。まるで風呂屋のペンキ画… 昭和の始めに「御坂隧道」ができ、脇に茶屋ができた。 この茶屋から眺める霊峰は大空に浮かぶかのようにそびえる。 真下には河口湖が箱庭のように存在する。文士たちはこの景色に酔った。 茶屋は昭和9年創業で「天下茶屋」といい、現在も営業中。創業当時、「富士見茶屋」とか「天下一茶屋」といったらしいが、徳富蘇峰が茶屋を新聞で「天下茶屋」と紹介したことで、この名が世に定