東京財団上席研究員 森信茂樹 1. ピケティ氏の問題提起 ピケティ氏の「21世紀の資本」が世界的なベストセラー(学術書)になり、所得・資産格差問題が大きな話題となった。年初に訪日したこともあり、わが国の総合雑誌や経済誌も特集を組むなど、現在もその余韻は続いている。現に今国会の予算委員会でも格差問題を巡っての論戦が見られた。 筆者は、税制を専門に研究しているがエコノミストではないので、r>g (資本収益率>成長率)の是非を吟味する能力はない。ここでは、ピケティ氏がなぜ「資本」にこだわったのか、この点について、「21世紀の資本」第15章「世界的な資本課税」の章を中心とした問題提起と、わが国の税制へのインプリケーションについて考えてみたい。 というのは、わが国でのピケティ本への論評は、「格差拡大を生む根本的な力」であるr>gの妥当性と、わが国の格差問題(氏の指摘するような1%99%問題は日本には