にはすぐれた読解が紹介されている。斉藤秀雄「真珠の指環」の役割と意味、である。 斉藤は「それから」の指環に注目する。真珠の指環は三千代が代助からもらったものである。ある時は指にはまり、ある時は質屋に入る。指環の履歴から導き出されるのは、本作が代助の恋愛物語ではなく、三千代の恋愛物語である、という結論らしい。私は当該論文読んでいないからこれ以上は説明できないが、実際に「それから」を読むと、指輪が気になる書き方を作者がしている。 私見では「それから」は「ニーベルングの指環作品群」に含まれる。 そう考えないと、冒頭の足音、下駄、心臓などか説明できないのである。もしもこの仮説が当てはまるならば、「それから」は下敷きを知らないと読解できない半端な作品ということになる。 夏目漱石は、近代日本文学最大のスターである。漱石作品は(大多数は人気がなく、あまり読まれていないのだが)部分的には多くの国民がどこか