私たちが日々実践している文字による言語活動は、長い時をへて形づくられてきたものだ。古代における漢字の受容から、往来物による学びの時代へ。近世の文字文化の多様な展開から、近代学校の成立へ。──世界の事例にも目くばりしながら、識字の社会的意味を広くとらえ、今も揺らぎのなかにあるリテラシーの歩みを描く。 はじめに 第一章 日本における書き言葉の成立 文字以前 文字の借用 日本語と漢字 漢字の移入 漢文訓読 変体漢文 宣命体 万葉仮名と仮名 仮名交じり文 さまざまな文体から「候文体」へ 近世における書体の一様性 第二章 読み書きのための学び 習書木簡にみる文字学び 一文不通の貴族たち 往来物の時代 書儀と往来物 手紙文による学習の広がり ヴァイ文字の学習と手紙 消息から往来へ 教科書的なるものとしての「往来」 第三章 往来物の隆盛と終焉 近世社会と往来物 庶民用文章型往来物 地理科往来物 地域往来