内 容 谷崎潤一郎をはじめ、口述筆記を行った作家は実は多い。だが、ディスアビリティやケアが絡み合う空間で、筆記者、特に女性の役割は不可視化されてきた。大江健三郎、多和田葉子、桐野夏生らの作品をも取り上げ、書くことの代行に伴う葛藤とジェンダー・ポリティクスを鋭く分析した力作。 目 次 序 章 口述筆記する文学 1 口述筆記とはなにか 2 〈もう一人の書き手〉を問う 3 〈書かれた作品〉から〈書かれつつある現場〉へ 4 本書の構成と概要 第Ⅰ部 ディスアビリティをめぐる交渉 —— 口述筆記創作の現場から(1) 第1章 ペンを持てない男性作家 —— 谷崎潤一郎の場合 1 書くことのディスアビリティ 2 谷崎潤一郎と口述筆記 3 口述筆記のジェンダー・ポリティクス 4 リテラシーをめぐる評価と〈書かせる〉こと 5 署名と実像のはざまで 第2章 「書く機械」になること —— 伊吹和子『われよりほかに