俺は愛せる。 むかし付き合っていた彼女がとにかく「屁をこく女」で、普段から笑った拍子や何気ない動作の度に間抜けな音をケツから鳴らしていた。 「プッ」 「プゥーッ」 ときて、 「ブッ」 「ブーーッ」 と、濁音から半濁音へとどんどん変化していき、 「ブゥーオゥ」 「バフンッ!」 バイソンの鳴き声みたくなり、 「ヌーンヌッ」 と最終的に落ち着く。 そんな七色の屁を自在に操る彼女。でも、俺はそんな屁は全然良かった。むしろ好きだった。落ち込んでも、イライラしてても、彼女の屁で元気になれた。彼女の奏でるメロディが…俺を救ってくれた… しかし大きな問題があった。それが「音のない屁」、サイレントサイレン(無音の警告)の存在だった。なんの気配も感じさせず鼻元まで接近し、致死量レベルの激臭をブチ込んでくる、それが彼女のサイレントサイレンだった。特にメシあとの屁、ただの殺人。最終屁器彼女。 しかもやっかいなのが