落書き、色塗り、メモ書き……前の持ち主の“痕跡(こんせき)”が残ったままになった古本に出会ったことはありませんか? このような本を『痕跡本』と名づけ、そこに残されたさまざまな読書の記憶を読み解くブックイベントが、4月24日から5月9日まで東京『不忍ブックストリート 一箱古本市』で開催されます。この風変わりなイベントについて、『痕跡本』の第一人者にして案内人『古書五っ葉文庫』の古沢和宏さんにお話をうかがいました。 ――古本への書き込みに興味を感じはじめたきっかけは何だったのでしょう? 某芸術大学に通っていた頃から、何らかの意図に基づいて人が作りだすものよりも、偶然に生まれた現象に興味を持っていました。たとえば、道に落ちているモノ、ぱっと見ただけでは意味がわからない色あせた看板など。無作為に起きた現象なのになぜか想像力をかきたてるモノにひかれてしまって。 その後、古本屋を始めて、落書きのある本