以下、『夏の庭―The Friends』と『グラン・トリノ』の結末に触れています。 湯本香樹実の小説『夏の庭―The Friends』で、「死」への恐怖と好奇心をともに克服するべく、近所でひとり暮らしの老人の家に張り付いて、その死にざまを見届けようと「観察」を続ける三人組の小学生と、老人との間に人間的な交流らしきものが芽生える最初のきっかけは、コンビニ弁当ばかりの老人の食生活を気に掛けた魚屋の息子の山下が、「おじいさんに食べさせるのはどうかな、なんて思って」と、家から売物の刺身一皿をくすねてきたことでした。 山下は、玄関の扉をじいっと見た。それからぼくの顔を見て、うん、とうなずくと、おそるおそるブロック塀の切れ目から、玄関の前の端の欠けた敷石に手を伸ばして、そおっと皿を置いた。そしてぼくたちのほうを向いた。ぼくと河辺が、声を出さずに「行け、行け!」と手を大きくふって合図すると、やつはまた