2014-08-23 あめふり めざめたときから雨ふりの土曜日は、生ま れて三年のひとには退屈極まりないようで 絵本もあらかた読みつくし、怪獣になって ふとんの山を破壊してもまだ疲れを見せず 外に行きたがるのをなんとか宥めてお昼寝 に誘いますおなかにタオルケットをかけて目を閉じる よう促しても、三歳のひとは少しも眠たく ならぬらしく、お話してしてとねだるので しかたなく枕の上に指を二本置いてお話の はじまりです 左手の、中指が左足で人差し指が右足の小 さなひとはどこにでも行けるのです 月の上を歩いたり南の島の王さまに拝謁し たり虹を食べたり亀と戦ったりするのですやわらかく降る雨の音はざあざあではなく さあさあと聞こえます さあさあ寝なさい、お話はそのぐらいにね そんな風に隣の部屋から見ていた三歳のひとの父親は よくそんな口からでまかせを次々に言える なあ