誰もが自分の心の支えとなる愛する歌や言葉や大切な存在を持っていると思う。ひとつの鞄に詰め込める荷物には限りがあるので、私は私を支えてくれるものたちを言葉に残し、刺青のように心に刻む。何度でも思いだしたくなる文章がこの世の中には幾つかあって、リチャードバックが書いた『イリュージョン』という小説の中にも、私を根底から支えてくれる幾つもの珠玉の言葉たちが登場する。 「長い旅行に必要なのは大きなカバンじゃなく、口ずさめるひとつの歌さ」 これはスナフキンの有名な台詞で、自分が何か厳しい局面に置かれたとしても、初心を取り戻せるひとつの歌さえ思い出せれば、何度でも人間はやり直せる。それは歌であり、言葉であり、この世に確かに存在していたひとりの確かな生命の熱量であり、それは時空を越えて周囲の人々に伝染していく。 ー 「自分の歌をうたい続ける」ということ。 人生がひとつの旅であるとすれば、誰もがこの瞬間も旅